② 見て聴いて読む!

2017年5月 1日 (月)

『羆撃ち』

20170501_dscf0127

少し前になるがNHKのプロフェッショナルという番組で北海道、知床に住み羆を狩る久保俊治という方をドキュメントした放送があり、興味深く見た。そこで、久保俊治・著『羆撃ち』(小学館、2009年刊)という本を手に取った。その久保氏、父親の影響もあり少年時代に狩に接し、10代ですでに猟師になろうと決心。20代で羆狩りのハンターとなる。

久保氏、山という自然の中、羆と人間、生きものとして一対一になり熊を狩るのを流儀としている。鹿や熊の習性を観察し、学びながら何日もかけて山の中で羆を追う。そんな山の中で彼が感じる自然との一体感を感じる文章がすばらしい。実際に体験したものでなければ書けない描写の数々である。

冬山で倒したばかりの鹿の体内で久保氏が手を温めることが書かれている。自分が乗るソリを曳く犬で同じ行動をとろうとしたアメリカ人作家の短編を読んだことがある。また、先年ディカプリオが主演男優でアカデミー賞を獲った映画「レヴェナント蘇えりし者」ではディカプリオが死んだばかりの馬の体内に潜り、嵐を凌いだシーンもあった。人は寒さが堪えられない。

本の後半、生まれて間もない真っ白なアイヌ犬を譲り受け、訓練し、猟に伴う。フチと名付けられた牝のアイヌ犬はかしこく勇敢で、猟のかけがえのない同行者に育つ。

『羆撃ち』で描かれたのは著者の猟の前半生。NHNの番組で今現在、執筆する姿も紹介されていた。久保氏のその後の山、自然、猟、羆への関わりを知りたい。









| | コメント (0)

2017年4月15日 (土)

自伝

20170413dscf2623

新潮文庫から『チャップリン自伝 若き日々』(上巻)が出たので読んで見た。チャップリンは1889年生まれ、1977年、88歳で亡くなっている。自伝が書かれたのが74歳、教育を受けることのなかったチャップリンは独学で読み書きを身につけたと言う。

両親が離婚後、兄とチャップリンは母親のもとで育てられる。酒好きの父親は早くになくなり、母親の裁縫などで兄弟は食うや食わずの生活を送るが、頼りの母親も精神を患い入院する。そんな境遇から兄弟は10代から働く術を身につけはじめる。両親共に芸人という血もあり、チャップリンは芝居で経験を積み、アメリカで映画に関わることになる。

とまあ、ここからチャップリンの夥しい短編映画が作られ、評判を呼び、人気を博してゆくわけだがチャップリンは早々に脚本、編集、監督までやりはじめる。自分を見せるのに人任せにしない。(これはビートたけし、ではないか・・)

チャップリンが自身で書いたというこの自伝。よくこれだけ詳しく当時の出来事や人を覚えていたと驚く。



| | コメント (0)

2017年4月 5日 (水)

ラ・ラ・ランド 魅力の場所

20170321_dscf1368

映画『ラ・ラ・ランド』を見た。冒頭の交通渋滞を逆手にとった踊り、ハリウッド映画黄金時代を思い起こさせるセット撮影、終盤の絵のような回想シーンなどなど、まだ若い監督デイミアン・チャゼルによる見せ方満載の―映画オタクが本物の映画を作ったような―才気ある仕上がりになっている。

ただ、話は古臭い。いつかジャズクラブを経営したいピアニストのセブ(ライアン・ゴズリング)と女優志望のミア(エマ・ストーン)。見かけることのできないジャズ好き男とオーディション全敗の女。そんな男と女のラブストーリー。今どきありえないワンパターン設定だが映画好きの、この監督が作るミュージカルだとすれば、作りものとして容認できなくもない。映画の完成度から見れば、それほどでもない。しかし・・・。

セブ役のライアン・ゴズリングは哀感溢れたピアノを弾き、ミア役のエマ・ストーンは夢追う者の心情をせつなく歌う。歌、演技、どちらもすばらしい。ふたりが夕景で歌い踊るシーンの素敵さ、セブが海辺で歌う<シティ・オブ・スターズ>の情感、ミア、最後のオーデイションでの<ザ・フールズ・フー・ドリーム>が心を打つ。いつしか、夢を追うふたりを応援したくなる。

『ラ・ラ・ランド』、ポスターとレコードを買おうと思う!







| | コメント (0)

2017年3月23日 (木)

証人喚問

20170323_dscf1333

衆参予算委員会でのK氏証人喚問の放送を一日見ていた。「梯子を掛けのは私であります」、「梯子を外したのはM府知事であります」、トカゲの尻尾切り、昵懇の仲、「事実は小説より奇なりであります」とその応答に感心してしまう。

もはや興味は国有地払下げの値引きにおける口利きよりも100万円の寄付があったのかどうかに関心がゆく。下世話な関心である。

矜持ある官僚ばかりではない、口利きなんかなくとも忖度で動く官僚はいると思う。

詐欺師は、政治家は、わたしという人は、―時と場合と立場と心の状態で―どうしても嘘をつく。


| | コメント (0)

2017年3月22日 (水)

カルテットが終わる

20170320_dscf1321

ということで今シーズンのテレビドラマの中では『カルテット』が良かった。意表をつく展開、キャスト4人の役柄、脚本の巧みさで見せた。生き方に不器用な登場人物たちを脚本家はどう描き、役者たちはどうやって演ずるのかが面白かった。

軽井沢あたりの別荘での共同生活、テーブルを囲む食卓で鳥のから揚げにレモンをかけるかかけないか、最終回では同じく鳥のから揚げの皿におけるパセリの存在(立ち位置)まで、そのこだわりの掛け合いが、やりとりがキャラクターになりドラマになる妙。満島ひかりの着ぐるみ姿がなんとも良かった。

最終回のコンサート。シューベルトの『死と乙女』が過去の映像を混じえたいい演奏なのに観客に席を立たせ、帰させるのはどゆこと?演奏する本人たちにとってはこれまでのこともあり気持ちと感情が入った演奏だったのに関わらず、聴衆にとってはまるで聴く気にならない程度の演奏だったのか・・・?そもそも、このコンサートは無料、有料、どちらだったのか。

まあ、夢を追うか、趣味にするか、道の途中で誰もが迷う。シューベルト、『鱒』はもっていたけど『死と乙女』のレコードはなかったような・・・。


| | コメント (0)

2017年3月14日 (火)

商売

201703103dscf1047

髙田郁の『あきない世傳 金と銀』も三作目奔流篇となった。大坂の呉服商へ父を亡くし幼くして奉公にあがった幸の苦難の物語。まあ、その苦難を後添えとして、女子としてどう乗り切ってゆくかが見せどころ、読みどころである。

このシリーズ、商いがどういうものであるのかを改めて教えてくれる。



| | コメント (0)

2017年3月12日 (日)

ギリシャ人の物語Ⅱ

20170310dscf1033

塩野七生・著『ギリシャ人の物語Ⅱ 民主政の成熟と崩壊』(2017年1月刊 新潮社)を読んだ。

同シリーズ『ギリシャ人の物語Ⅰ 民主制のはじまり』(2015年12月刊)ではギリシャの各都市国家ポリスの成り立ちと政体の違いを、そして柱はアテネ、スパルタをはじめとしたギリシャ連合軍がペルシャ帝国とどのように戦い勝利したかという紀元前491年からはじまるペリシャ戦役を描いた。

『ギリシャ人の物語Ⅱ 民主政の成熟と崩壊』はタイトルが示すように都市国家アテネの興隆を同じく都市国家でありライバルのスパルタを絡めて描く。この時代、アテネは政治家にしても文化にしてもまさしく成熟期となり、あのパルテノン神殿が紀元前438年に完成する。哲学者で言えばソクラテス、ギリシャ悲劇ではアイスキュロス、ソポクレス、エウリピデス、喜劇のアリストパネスという世界史に出てくる人満載の時代。

そのアテネでのペリクレス時代とその後にくる衆愚政治の時代を読むと、果たして現代に進歩はあった?とさえ思えてくる。

著者のスパルタへのこき下ろし方に何度も笑ってしまった。


| | コメント (0)

2017年2月23日 (木)

カンテ!

20170220dscf0129

石塚隆充の『REVERSO』というアルバムを聴いた。石塚はフラメンコ歌手、ギターで弾き語りをする。このアルバムでは<ミ・アモーレ>と<愛の讃歌>が特にいい。フラメンコの歌がどういうものなのかまるで知らなかったが、日本語で歌われることで伝わってくる何かがある。

カンタオーレ(男性のフラメンコ歌手)のカンテ(歌、魂の奥底から響く深い声)が聴ける。歌う節回し(?)に心が反応する。






| | コメント (0)

2017年1月22日 (日)

この世界の・・

20170120dscf9833

そういえば映画雑誌「キネマ旬報」の2016年邦画部門で「この世界の片隅に」がベストワンに選出されていた。あの「君の名は」が同じキネ旬でベストテンに入らないのだら、面白いと言えば面白い。

舞台は戦争前の広島と軍港である呉。主人公は絵が好きな少女すず。瀬戸内の海苔養殖の家で育ったすずの幼少期はものぼのとして微笑ましい。縁あって呉へ嫁にいくのだが戦時下の生活もうまく描かれている。すずの丹念に描かれた日常を広島の原爆で終わらせなかったことに原作者の思いが感じられた。

動くアニメの中にすずの<絵>をうまく入れている。最初のウサギの波が浮かぶ瀬戸内海がそうだし、爆撃の色や破裂がすずの絵心として、また心象風景とし効果的に使われている。それが見るものを感心させたり、ドキッとさせる。

20世紀という戦争の世紀、名もない一国民の生活する、生きる日常こそが尊いことをこの映画が教えてくれる。そんなメッセージを感じさせないくらいにこの原作とアニメは尊い。

とても良かったので2度見てしまった。サントラも公式ガイドブックも注文したところである。


| | コメント (0)

2017年1月 7日 (土)

聴きはじめは・・

20170107_dscf9437

例年ならコッホ指揮のいかにも古臭い『バッハ管弦楽組曲』を―この序曲が、これから式典がはじまるぞー!!!という感じでたまらなくいい―聴くところなのだが・・・、

20170107dscf9440


今年のレコード聴きはじめはパイネマン(ヴァイオリン)の『ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲』(1965年)になった。このレコードのオリジナルはジャケットにヴァイオリンを構えたパイネマンを正面から捉えた写真が使われており、高価で入手が難しい。そこで、再発版を手に入れた。

20170107dscf9458

パイネマンの演奏はこれみよがしのケレンがまるでなく、爽やかでとても真摯な演奏。いつかオリジナルをと思わせる名盤である。




| | コメント (0)

より以前の記事一覧