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2018年9月 3日 (月)

星夜航行

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飯嶋和一の『星夜航行』(新潮社)をようやく読み終えた。上下巻共600ページ近いボリューム、しかも夥しい数の人名、地名が出てくる。覚えづらい朝鮮と中国の武将たちまで登場するためページを遡り、人名のルビを何度も探すことになる。それさえ乗り越えれば読み応えは充分、主人公沢瀬甚五郎の波乱な人生に引き込まれる。

時代は16世紀の終り、秀吉が朝鮮出兵(1592~93年文禄の役、1597~98年慶長の役)とその前後を描く。沢瀬甚五郎は岡崎城主徳川三郎信康の小姓。信康は武田勝頼との密約を疑われ、謀反を恐れた家康より処分される。甚五郎は隙を見て逃げ僧になって国許を去り、九州で船商いに携わり、琉球、台湾、呂宋島マニラにまで行くことになる。そして、この物語の本舞台は天下を治めた秀吉の朝鮮出兵がどのようなものだったかを教えてくれる。明朝をそして世界までも侵略、支配したいと望む秀吉の無謀、小西行長や黒田長政など朝鮮へ出兵し、最前線で戦った武将たちのたくらみや思惑もあり、戦争はますます泥沼化する。

著者、飯島の筆致はとても丹念、登場人物の出自と来歴を語り、戦場となった城の攻防まで読んでいて目に見えるかのよう。どこまでも具体的である。そして、人物の内面に敢えて深く踏み込まず、出来事へ対する各自の行動を積み重ね、事象から時代を俯瞰する。

この小説を読んではじめて、秀吉の朝鮮出兵がどういうものだったか、その愚行を痛感させられた。


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