ブリッグス氏のレンガ入り
ここ数ヶ月、レンガ入りのスピーカーで音楽を聴いている。このスピーカーは英国ワーフェデールのスピーカーである。タンノイでもJBLでもない、まして人気のB&Wでもない英国のブランド、ワーフェデールはこの国では認知度が 大変低い。ワーフェデールの創始者はギルバート・A・ブリッグス。自らピアノも弾いたというブリッグス氏は音響学者でもあった。
1930年代、ワーフェデールを創設したブリッグス氏はスピーカー作りに手を染めてからというもの、日夜、自分の理想とする自然な音のするスピーカーを作るにはどのようなことをすればいいのか考えた。そんなある日のこと、ステッキを片手に街を散歩の途中、氏はよく見かける建物や塀に使われるレンガに目をとめる。壊れていた塀の傍らに落ちていたレンガを一個手にし、しげしげと見たブリッグス氏はこれを豆腐ステーキのように薄くスライスしてスピーカーに貼ったらどうか、レンガの材質と重さで音を悪くする振動がうまい具合に納まるかも知れんぞ、こりゃ・・と考える。
ブリッグス氏は早速、このアイディアを実行。薄い厚さにしたレンガが最も効果的と思われるキャビネット箇所を探る試行錯誤の毎日が続いた。そして、ついに納得の場所(音)を決定。ブリッグス氏はこのスピーカーを<レンガでメロメロ>と名づけ、製品化を決意した。
とある朝。ワーフェ村とデール村から働きにきていたおばちゃん(従業員のこと)たちにブリッグス氏は指示を出す。「このレンガをここに、こーゆー具合に貼るのじゃ、よいかな・・」と。これを聞いたワーフェ村とデール村のおばちゃんたちは内心ウググッ(レンガなんかをスピーカーに、この人いったい何を考えているのかしら)と思ったもののキャビネットの板にレンガをペッタン、ペッタンと貼っていった・・・。
時は半世紀と少し流れ、スピーカーが作られた英国から見れば遥かに遠い地球の裏側、極東は田園。田んぼばかりのイナカーナ州に住む一人の東洋人がブリッグス氏の開発したスピーカーから出てくる音に耳を傾けた。
あぁ、また気持ちよく寝てしまった・・。ちなみに、おばちゃんたちがスピーカーキャビネットに貼ったレンガの場所はヒミツ、ヒミツ・・。
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コメント
はじめまして。
wharfed ale と Mr. briggs 。
楽しく読ませていただきました。
w3 は大好きなスピーカーです。
私もQuad II とともに音楽を楽しんでおります。
アンプに火を入れるとピアノの前にちょこんと端座しているw3から瑞々しい響きが部屋いっぱいにひろがります。
w3とw4。
1933年から30余年、スピーカーを造ることに一生をささげたMr.Briggs から音楽再生愛好家への最後の素晴らしいプレゼントだと思います。
白黒の写真と文章も素敵ですね。
それでは。
☆野上さま こんにちは
拙い文章をお読みくださり、ありがとうございました。
W3で音楽を聴いていた時にふと想像してみた光景に
なります。
野上さまはQuad IIで愉しまれているとのこと。
筆者はESL57時代にQuad IIを手にしたのですが
その未熟さから手放した経緯があります。
W3は今後リークで聴こうと計画しているところです。
野上さまも、良き音楽ライフをお送りください。
筆者
投稿: 野上 新三 | 2015年4月 6日 (月) 01時07分