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2012年12月23日 (日)

レ・ミゼラブル

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冒頭の船とその綱を曳く囚人の中にその男はいた。男の名は<ジャン・バルジャン>。兄弟の子どものためにパンを盗み、19年の投獄を耐えた男だ。釈放されても囚人だったため求めても職はなく、寒さの中で震える夜を過ごすしかない。ある夜、教会の司祭に声をかけられたジャン・バルジャンは食事と宿を提供される。・・が、司祭たちが寝静まった深夜、食事に使われた銀の皿、グラス、蜀台を盗み彼は逃亡する。しかし、すぐ警官に捕まり司祭の前につきだされるが司祭は食器や蜀台はジャン・バルジャンへあげたものだと説明する。罪を免れたジャン・バルジャンは<これはいったい何なのだ!>と悩む。人の冷たさや悪意にさらされ続けて来た今までを変えるべく男は別の生きかたに舵を切った。

映画『レ・ミゼラブル』がはじまり科白が出た途端、暗闇の中で思わず小さく笑ってしまった。予想していなかったので苦笑いに近い。科白が歌、つまりミュージカルだったのである。そう、今回のレ・ミゼラブル、長い原作の物語の枝葉をそぎ落とし、登場人物たちの心情を歌にした舞台ミュージカルの映画化だったのである。最初は果たして?と危惧の方が大きかった。冒頭の船のシーンがおおげさなCGだったせいもある。

だが、囚人ジャン・バルジャンを演じたヒュー・ジャックマンの面構え、コゼットの母親役であるアン・ハサウェイの歌でミュージカルへの不安は払拭された。俳優それぞれの感情そのものとも言える歌を聴いた。中ではエポニーヌは得難く(かつ役としては得だし)、成長したコゼットとマリウスの未熟さは瑞々しい。ジャン・バルジャンを追う警部(ラッセル・クロウ)は憎憎しく!コゼット(小さい時の)はかわいく!宿の夫婦の性悪!はいくぶん弱い。

話はそれるが岩波文庫の『レ・ミゼラブル』は挿絵が効いている。絵は物語を膨らます。この挿絵を解説した文庫もあった。近い出版では塩野七生の『絵で見る十字軍』が挿絵の好例だろう。

もひとつ、話は映画からそれる。ユーゴーの原作の魅力は長い物語であることだ。その物語の枝葉が面白い。それは取りも直さず作家ユーゴーの筆力の所以でもある。例えばテナルディエ(コゼットを引きとった宿の主人)の戦場での盗みの姿、或いは後半のパリの下水道のウンチクなど・・。それら全てを含んでジャン・バルジャンという男の物語は大きい。

監督は『英国王のスピーチ』のトム・フーバー。テレビ畑から出てきた人は演出に切れ味がある。映画だけの監督よりテクニックはあり、現場で鍛えられたことで引き出しが豊富になるのだろう。ジャン・バルジャンのヒュー・ジャクソン(過去のジャン・バルジャン役であるジャバンやベルモンドに比べれば確かに線は細いが)、そうか、オーストラリアで舞台を演っていた。道理でうまい。




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