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2012年3月10日 (土)

蜩(ひぐらし)

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葉室麟の『蜩ノ記』 を読んだ。先に文学賞を受賞したので気になっていた。

十年後に切腹を命じられた男にまつわる物語である。男は十年かけて、切腹を命じた己の藩の家譜を書くのである。その家譜の手伝いと男の監視をも兼ねた若い武士が藩から送られる。送られた男、檀野庄三郎の視点でこの小説は展開する。

読み進めると藤沢周平の『蝉しぐれ』が思い浮かんだ。タイトルにある蝉の一種、蜩(ひぐらし)は夏にキキキ、ケケケ、カナカナカナと(受け取る側の聞こえ方もあり)さまざまに鳴く。カ行好きの蝉のようである。減衰していくあの鳴き声、アニメや映画でも印象的に使われる。夏の終わり、夕暮れ時にでもあの声を聞くと心に染みる時がある。季節の人の寂寥だろうか。

檀野の心の変化と切腹を命じられた男の息子の成長もうまく描かれているが、先に挙げた藤沢の『蝉しぐれ』と似通った設定もあり、首を傾げる。

時代小説は藩や武士制度と言う制約があり、似たようなストーリーになりがちだ。その制約の中でどう手をつくして新たな時代小説を生むのか、作家というものはつくづく大変な仕事である。


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