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2012年3月16日 (金)

二流小説家

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『二流小説家』(デヴィッド・ゴードン著、早川書房)を読んだ。何年かぶりのハヤカワ・ミステリーである。ハヤカワ・ミステリーは海外のペーパーバックを模した装丁で紙に黄色く色がついている。安っぽいので読後に読み捨てられるような雰囲気がある(が私は捨てないように心がけている)。そういえばビートルズに<ペーパーバックライター>という曲があった。この曲の主人公はうまい具合に“大衆・通俗本作家”になれたのだろうか・・。

さて、『二流小説家』の主人公ハリーはニューヨークで暮らすパッとしない食うや食わずの作家である。何年も一緒に暮らしていた女性からは見放され、作家より割のいい家庭教師のアルバイトまで手を出し、穴の開いた靴下を年がら年中履いているような男である(私も靴下に穴を見つけたことがあるので少々共感を覚えた)。そのハリーに刑務所の連続殺人犯から自伝依頼の手書みが届く。

原題は<The Serialist>、調べたら<連載物作家>とあった。著者デヴィッド・ゴードンは饒舌である。軽妙で比喩するボキャブラリーのなんという多彩さ。しかも、本に関しても博識である。知っている本や作家に思わずニヤリとさせられる。

著者はこの小説の中で主人公ハリーに三つのペンネームを持たせる。それは通俗的なSF、ありきたりのミステリー、エッチなヴァンパイア小説なのだがこれらジャンル小説(というらしい)をミステリーと言う本道へ複雑に組み込み、絡ませた。

『二流小説家』というタイトルからくる先入観もあり最初は“まあ、こんなものか”位で読みはじめた。しかし、後半まで読み進むにつれ実はこれは二流に見せかけた本気モードのミステリー小説だと気づかされる。それがこの小説の魅力であり醍醐味となっている。

題材は猟奇的でポルノ的だがこの『二流小説家』というペーパーバック、決して侮れない。主人公ハリーが思わず口にする「なんてこった」な小説である。



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