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2011年7月14日 (木)

10日目 フィレンツェの雨

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フリータイムの日、午後、早い時間にホテルに戻り少し仮眠を取った。目覚ましで3時過ぎに起きると、街へ出かけた。ドゥーオモが見えたあたりで突然大きなカミナリの音。その途端、広場周辺の鳩が一斉に地上から飛び立った。レプップリカ(共和国)広場を過ぎた頃、雨が強くなり傘をさす。ペルージャ以来、この旅で二度目の雨だ。

ヴェッキオ橋、両側に並ぶ宝石店のうすいオレンジ色の灯りの間を進む。橋終わりの交差点を渡ったすぐ左にサンタ・フェリチタ教会はある。ヴァザーリの回廊から内部を見下ろした教会。この教会、正午から午後4時まで見学ができない。そこで時間に合わせて出かけてきたのである。目的は教会内、カッポーニ礼拝堂にあるポントルモの<十字架降下>と<受胎告知>である。

ポントルモを知ったのは2008年、小学館から出た<ルネサンス美術館>でだった。ポントルモの<十字架降下>の一部分がトリミングされ、この大きな美術本の表紙カバーを飾っていた。十字架をから降ろされたイエスを肩に乗せた少年が驚きと悲しみの入り混じった表情を浮かべる。金髪の巻き毛の少年、最初はてっきり女性かと思ったが、体がたくましかった。しかも、少年の背中の色がうすいピンクなのである。ピンクの子豚じゃあるまいし、・・理解できなかった。

本によるとポントルモは「マニエリスム」の画家とされる。マニエリスムは盛期ルネサンス以降のイタリア美術の手法・様式を意味する「マニエーラ」から派生した。精緻で技巧的、奇想におぼれた印象を与えるが、さまざまな美の可能性を形態や構図、様式のゆらぎの中に見い出そうとしているとある。

そういわれて見ると、この少年の背中がピンクでなかったら、彼の表情と相俟った強い印象がこれほどまで迫ってこないと言える。十字架から降ろされたイエスとマリア、それを囲む人。マリアの青の衣を効果的にピンクが囲む。<十字架降下>の絵全体をこの少年と彼の背中のピンク色が支えている。

この絵があるカッポーニ礼拝堂は暗い。お金を入れると灯りが絵を照らす仕組みになっている。観光地で覗く望遠鏡、あるいは安ホテルのテレビのような・・。

さて、<十字架降下>の右隣りに<受胎告知>がある。この天使だが空気をはらんだオレンジとピンクの衣をまとう。ふくよかな体と傾げた首の天使、天使というよりは女中か子守り女に見える。小さな羽根でかろうじて天使とわかる。

ここでも交わされた言葉を勝手に入れてみる。
天使ガブ「エへッ、あたし、来ちゃいました!マリアさま、実はですねー」
マリア  「あなた、もう少し落ち着きなさい。それから、ゆっくり話しなさい。どう、わかった?」
どことなく楽しそうな天使に、クールなマリアである。

そろそろ閉めますよというサンタ・フェリチタの雰囲気に押され、出入り口のドアを後ろ手に閉めた。見上げると教会入り口の天井アーチに切り取られた空があった。上がらない雨と空を、しばらくここで見ていた。

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(5月21日 フィレンツェにて)

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