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2011年1月29日 (土)

漂砂のうたう

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木内昇の『漂砂のうたう』(集英社)を読む。賞を取ったものは以前ほど読まなくなったが、興味があり手に取った。直木賞発表前に深夜ラジオで名うての編集者が口にしていたのが頭の隅に残っていた。

話は維新の名残りも色濃い明治10年、根津遊郭(ゆうかく)が舞台である。<遊廓>、時代小説でも読まなければわからない内輪の世界を筆者はしたたかに描く。しかも遊郭そのもので大見得を切るでもなく、主人公に厳しい。落語の怪談噺もうまく取り入れている。

主人公、定九郎は遊廓に客をあげる妓夫(ぎゆう)を生業としている。定まった住まいさえ持たない暮し。元が武士の家に育つが維新でその権威も落ちた。事に際し、言い訳さえ弁解がましい男。定九郎の心の動きが巧みだ。定九郎以外の人物造形も見事だが、彼らの内面にまるで踏み込まない。だから、人情話に落ちない。定九郎と他の人物との立ち位置のうまさに感心する。

導入部は硬く読みづらいし、登楼を登楼(あが)ると読ませるなど最初は戸惑うがすぐに話に惹きつけられる。まさしく新しい才能(本の帯にある)だと思う。苦味ある辛口さに惹きつけられた。

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