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2010年9月29日 (水)

銀ノ山温泉2日め 早朝

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まだ暗いうちに目覚めると耳に入ってきたのは川の音。部屋は木造4階にある。宿正面のすぐ下の川に段差があり、そのせいでせせらぎの音が大きい。しかし、昨日に比べればだいぶ音にも慣れた気がした。温泉宿に働く人にとってこのせせらぎは日常生活の中のひとつの音に過ぎない。

この温泉街のとある宿の長男として生まれたSは窮屈なこの土地から高校卒業と同時に飛び出す。大学を出て社会人になり、都会で何年も多忙な暮らしをする。仕事や生活の疲れがワインの澱のように溜まっていった頃、まとまった休暇をSは取る。Sは出かけた旅の最後にアドリア海に面した山の斜面に築かれた街を訪ねる。その街の急な階段をふうふう言いながら歩く。猫に無視される。Sは現地の人と身振り手振りでコミュニケーションをする。たわいないことで笑う。さんざん歩いてホテルに戻り、静かにお茶を飲む。そして、空気や空の色は確かに違うがこのアドリア海の狭い街と自分が生まれ育った山あいの土地も全く同じようなものだと思う。広いは狭く、狭くは広い。
やがて何年か後、川が流れる山あいの狭い温泉に戻ったSは「ラーメンはやっぱりあそこですよね」と泊り客と会話しながら荷物を運ぶリヤカーを押す。
 
ようやく空が白み、山の遅い朝を迎えた。木々と葉が揺れ、さっきまで降っていた強い雨もやがて弱くなった。障子を開け窓から外の景色をしばらく眺めた。布団をかけたり、剥いだりしながら私は朝をゆっくりと迎える。

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