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2010年5月 5日 (水)

チューリップの彼女

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チューリップを見て思い出したことがある。もう、5、6年前ぐらいだろうか、パソコンの基礎を教える講座に通った時期があった。三ヶ月間かけてその講座でパソコンの初歩を教わった(普段使わないことまで・・・が、今はすっかり忘れた)。最初の頃、ツールを使い絵を描く授業があり、ふと見ると私の斜め前の女性は今この時期に咲くチューリップをマウスで描いた。まあ、園児が描くような上手とは言えない真横からのアングルのチューリップだった。しかし、彼女は特筆すべき技の持ち主だった。
授業が始まると講師が教室の前に立つ。割り当てられた当番の声に合わせ、私たちは起立し礼をした。離れた斜め前にチュリッープの彼女が居り、見るとはなしに目に入ったのは彼女の礼する背中の線だった。両手をお腹前で軽く重ね合わせ、とても自然に彼女は34
度ほど上半身を傾け、折り目正しい礼をした。その背中は限りなくまっすぐでほんの少し頭が下を向き、3、4秒静止する。ある種、敬虔なクリスチャンが祈りを捧げるような礼。
そんなことがあって私は授業開始の度に彼女の後姿を捜すことになる。礼に見とれたというわけだ。ポニー・テールが似合い、わざとペンキで汚したジーパンで授業を受ける彼女が洋服販売の仕事に就いていたことを知ったのは何日か後のことになる。
これほどの礼する背中の持ち主ならパソコンで描いた絵など、そう特にチューリップの絵などへたでいいと思うのだ。

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