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2007年5月20日 (日)

下ノ池で ツキアイ鳥にあう (後編)

< 下の池で ツキアイ鳥にあう(前編) >からの続き。
翌日、昼近くまで鳥を待っていたから、
<ミタカイ?>を私一人で捜しても文句は言うまい。
もっとも、鳥に約束の時間に来ないと抗議してもね。
きのう、ツキアイ鳥と別れたあたりにちょうど道しるべが立っており、
鳥が時おり目をやっていた。
その「笹ヶヶヶ沢(ささがががさわ)方面」へ降りることにする。
肩幅くらいの山道が続いている。

小雨がパラつき、新緑はますます暗くなり、両側に笹の葉が茂っている。
やがて、山道は胸ほどの高さの白い細かな花に囲まれる。
体で花をかき分けて進む。
少しひらけたあたりで木の枝にさかさまに置かれたコップを目にする。
これが鳥の見せたがった<ミタカイ?>
だろうか。
違う。一息し、湧き水を飲んだ。

再び、笹の道が続き、道は沢と別れを告げた。
山道はますます雨で濡れ、私は山の斜面を登り始める。
沢の水音が遠くなっていく。
斜面の道が細く、足元の側は深い沢である。滑ったらあぶない。
きつい上り坂が続き、何度も休む。

ツキアイ鳥からは何のヒントもなかったので、
私が<ミタカイ>を発見、認知しなければならなかった。

●<ミタカイ>は木々の枝に空が覆われたあたり、
光が射さない草の間にひっそりとあった。
<
横たわった木>だった。
変わった形の木だったから、ツキアイ鳥が好んでいそうに思えた。
先端の割れ具合、穴が開いたその木は恐竜か鳥に見えた。
木の穴が虚空を見る目玉を思わせた。
木の葬送だ。
この木こそ鳥が見せたかったもの・・・に違いない。
しばらく、その倒木の前にいたがツキアイ鳥からの合図はなかった。
「まあ、見つけることもできたし」
私は一人納得した。
誰ともすれ違うことのなかった雨の降る山の中。
目的は達成できた・・・かに思えた。


再び、黙々と中腹への山道を足元を確かめながら登る。
何度目かの
上り坂を右へ曲がったところで、
ふうーーっ、と息を吐くようにそれは視界に入った。
巨木は倒れたを思わせた。木肌はまるで象の肌だ。

このブナの巨木が倒れた時、きっと象のような雄たけびをあげたに違いない。


グオオオォー、グオオォー」

夜の山中に響き渡る最後の声。地響きが山を揺らす。
一瞬の静けさのあと風が沢、谷、山をわたっていく。
ヒューー、サーー、ザワ、ザワ、ザワ、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

木ハコウデナクテハ・・・
ツキアイ鳥の声が頭上から降りてきた。
見上げたが、木と深い緑の木ノ葉ばかりだけだった。
私は長い時間、倒れてなお堂々としたこのブナを見ていた。
この日ツキアイ鳥の姿は最後まで見ることはなかった。

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